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イタリアのワイン法

ワイン法について
 古くからワインを製造しているヨーロッパの国々では、自国のワインの輸出を促進するため古くからある有名なワインの評判を壊さないように作り方を定めている。その詳細を記した法律を一般にワイン法と呼んでいる。ここではイタリアのワイン法について説明したい。
 実際はワインに関する法律は他にもあり、アルコール飲料を贅沢な品としてそれに税金を課すための法律、純粋性や安全性を確保するために作られた法律もある。これらもワイン法であるが、ここでは製法を規定したワイン法について紹介する。
 イタリアでは1924年に最初の立法が実施された。その後、1937年にも改正、1963年にまた改正し現在の法律ができた。
 何度も改定されたのは、実際の生産者がこの法律の不備を訴え、従おうとしなかったからだ。

 

 その後、EECによるワイン製造に関する規定が作られ、イタリアもその規定に従うこととなり、国内法とそれとを摺り合わせ、EECで規定されたものはそれに従い、規定にないものは国内法に従うこととなって、現在にいたっている。
 このワイン法は、6項4条で構成されている。
 最初にワインの格付けが定義されている。次にぶどう畑の名簿を作成、「申告と生産の管理」が規定され、ワインの格付けをする委員会の設置に関する法律。次が、申請されたワインを審査する機関の設置。最後が製造業者が自主管理で共同でワイン作りをする協会の役割について書かれている。
 ここでは主に最初の「格付けの定義」の内容について紹介しよう。


D.O.C.Gワイン
キアンティ・
クラッシコ(赤

ワインの格付け
 上記の記述の内、飲む側が気になるのはワインの格付けだと思うので、以下で少しその説明をしたい。

ワインの等級は4種類
 ワインの格付けで定義されている等級は4種類ある。
1.D.O.C.G(デノミナツィオーネ・ディ・オリジーネ・コントロラータ・エ・ギャランティータ)
2.D.O.C(デノミナツィオーネ・ディ・オリジーネ・コントロラータ)
3.I.G.T(インディカツィオーネ・ジェオグラフィカ・ティピカ)
4.V.d.T(ヴィーノ・ダ・ターヴォラ)
の4つである。それぞれの単語の訳を知れば大体の意味は分かると思うが、要するに等級を4種に分けたということなので、特級、1級、2級、ただのワインと覚えておけばいいのではないかと思う。

  単語の意味
デノミナツィオーネ
=原産地呼称(ワインの通り名、一般的名前)
オリジーネ=オリジナル(独特の)
コントロラータ=コントロール(統制、国が作り方を守らせているという意味)
ギャランティータ =ギャランティ(高品質であるということ、特別に良いという意味合い)
インディカティオーネ=指示、指摘
ジェオグラフィカ=地理的(生産地をさす)
ティピカ=代表的な、典型的な
ヴィーノ・ダ・ターヴォラ=卓上ワイン(普通のワイン全般)


D.O.C.Gワイン
キアンティ・
クラッシコ(赤)


D.O.C.Gワイン
バルバレスコ
(赤)

D.O.C.Gワイン

 イタリアのワイン統制法によって決められている一番おいしい(高級)ワインがD.O.C.Gである。
 これは日本では「統制保証原産地呼称ワイン」といわれている。しかし、日本語なのに何のことかよく分からない。で、D.O.C.Gという略称はフルスペルだとどうなるかと調べてみると「Denominazione di Origine Controllata e Garantita」となる。
 これを訳し直してみると、最初のDは「呼称」と訳されている。「通り名」という感じか。ワインには他に生産社がどこか分かるように名が付けられている。それを「銘柄」と考えると、それと区別するため別の訳が必要になりそれが「呼称」となっている。例えば、右の写真は、D.O.C.Gワインのバルバレスコのラベルだが、「コステ・ルビン」と書いてある。これはフォンタナフレッダ社の作るバルバレスコワインの名前なのだ。そしてその上にちゃんとバルバレスコと書いてある。「コステ・ルビン」は銘柄で「バルバレスコは「原産地呼称」、通り名である。


 

 次の「O」は「オリジナル」で「独特の」。「C」は「コントロール」でこの場合、国が作り方を守らせている、統制しているという意味。
 「G」は「ギャランティ」で「高品質」ということ。
 で、全体を意訳すると「独特の高い品質を持ち、国によって品質管理されて作られているワイン」ということになる。これで少しは分かりやすくなったのではないか。
 D.O.C.Gと称されているワインは古くから作られていて、その味に定評のあるワインばかりなのである。その「定評ある味を国が管理してきっちり作るようにしていますよ」という意味なのだ。「だから安心して沢山買ってください」とイタリア政府は言いたいのである。
 このD.O.C.Gワインは、その数が少しづつ増え現在は21種類ある。その下のD.O.Cワインだと約300種類あるから、いかにこのD.O.C.Gが高級であるかが分かるではないか。で、まずはその20種類から覚えていこうということで、その銘柄については別項で紹介している。



D.O.Cワイン
カステル・ヴェッキオ
(赤)

D.O.Cワイン

 スペルは「Denominazione di Origine Controllata」でD.O.C.GからGの「Garantita」がとれたもの。「その独特の品質を国が品質管理して作られたワイン」である。
 ワイン法ができた頃は、このD.O.Cワインが一番だった。D.O.C.G は後に作られたのである。だから、2番目だからといって侮れないワインがここはある。
 D.O.C.Gと違い、この等級のワインは300種類くらいあり、とても全部は覚えきれない。ここでも全部は紹介できないだろう。しかし、このあたりに一番飲む可能性のあるワインがちらばっている。


D.O.Cワイン
ソアーヴェ(白

I.G.Tワイン

 Indicazione Geografica Tipica = 地域特性表示(インディカツィオーネ・ジェオグラーフィカ・ティピカ)の略。これは3番目の等級のワイン。
 「典型的産地表示付きワイン」のこと。ぶどうの産地と品種名が決められている。

 

 

 その条件を守って作られたワインに対してつけられる呼称。この等級のワインも沢山ある。1ヘクタール当たりの収穫量、使用葡萄品種、熟成などの生産に関する規定がある。使用品種を表示することもできる。規定は地域によって異なる。


V.D.Tワイン

 一番下の等級のワインであるが、品質管理されていないわけではない。ブドウ以外の原料を使ってはいけない等それなりの規制はされている。ただ、この地域ではこのブドウ品種で作らなければいけないと言うタイプの制限はないので、生産者が自由にブドウを選んで作ることができる。トスカーナで最近作られているカベルネ・ソービニオン品種のワイン等がその代表である。

 

 

 だから、V.D.Tワインだからといっておいしくないわけではない。
 トスカーナで作られているカベルネ・ソービニオン・ワインはけっして安くはないが、他の地のカベルネ・ワインは安くておいしいと思われる。見かけたら1本買って試してみる価値はある。

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